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損害額の算定

減額事由

損益相殺

損益相殺とは、被害者、またはその相続人が事故よって損害を受けながら、他方において、当該事故により何らかの利益を得た場合、この利益を損害額から控除して賠償額を算定することをいいます。

損益相殺を行う理由は、事故により損害を負ったとしても、損害の填補を受けているのであれば、それ以上に被害者が損害賠償を受けて二重に利得するのは不公平だからです。

ただ、被害者のあらゆる利益が損益相殺の対象になるわけではなく、種々の観点からの判断が必要となります。

ア 控除の対象となる給付
給付により損害のてん補がされたとして損害額から給付額が控除されるのは、当該給付が損害のてん補を目的としているものであるかによって決められます。
(ア) 任意保険金
任意保険金の支払は加害者の支払と同視できるため、控除の対象となります。
(イ) 自賠責保険金
自賠責保険金は、損害のてん補を目的としたものであり、控除の対象となります。もっとも、人身損害部分に限られ、物的損害はてん補されません。また、労災保険とは異なって損害費目による拘束はなく、人身損害額全体から自賠責保険金を控除します。
(ウ) 政府の自動車損害賠償保障事業てん補金(自賠法72条1項)
政府の自動車損害賠償保障事業は、自賠責保険金を補充するものであり、自賠責保険金と同様の性質を有します。
(エ) 各種社会保険給付
各種社会保険給付が控除の対象になるかは、当該給付制度の趣旨・目的、代位規定の有無、社会保険の費用の負担者、被害者の二重取りの有無等の観点から決めることになります。
a 労働者災害補償保険(労災保険)給付
控除の対象となる労災保険給付には、@療養補償給付(療養給付)、A休業補償給付(休業給付)、B障害補償給付(障害給付)、C遺族補償給付(遺族給付)、D葬祭料(葬祭給付)、E傷病補償年金(傷病年金)、F介護補償給付(介護給付)の7種類があります。

*括弧内は通勤災害です。
上記各給付は、損害費目による拘束があり、保険給付の趣旨目的と民事上の損害賠償のそれとが一致する関係にあるものに限り、損害から控除されます。
例えば、被害者に4割の過失がある事案で、治療費として200万円を要し、労災保険から療養補償給付として全額の支払がされていた場合、治療費のうち80万円は加害者が支払う必要はなく、被害者が負担します。しかし、療養補償給付は、休業損害等の消極損害や慰謝料とは趣旨目的が同一とはいえないので、支払済みの療養補償給付80万円をこれらの損害額から控除することはできません。
労災保険給付と損害のてん補関係については、療養補償給付(療養給付)が治療費をてん補することは明らかですが、入院雑費、通院交通費、付添介護費等の積極損害をてん補するかは争いがあります。休業補償給付(休業給付)、障害補償給付(障害給付)、遺族補償給付(遺族給付)、傷病補償年金(傷病年金)は休業損害及び逸失利益を、葬祭料(葬祭給付)は葬儀関係費用を、介護補償給付(介護給付)は介護費用をてん補すると考えられます。
b 遺族年金の給付
被害者の遺族が被害者の死亡を原因として遺族年金を受給することになった場合、遺族年金は控除の対象となります。しかし、この場合、逸失利益からのみ控除され、他の財産的損害や精神的損害との間で控除することはできません。なお、遺族年金については、被害者が支給を受けるべき障害年金等の逸失利益だけでなく、給与収入等を含めた逸失利益全般との関係で控除すべきです。
c 健康保険法等における療養の給付
健康保険法、国民健康保険法における療養の給付(健康保険法63条、国民健康保険法36条)は、労災保険の療養補償給付と同様、控除の対象となります。

*健康保険法第63条1項
被保険者の疾病又は負傷に関しては、次に掲げる療養の給付を行う。
一  診察
二  薬剤又は治療材料の支給
三  処置、手術その他の治療
四   居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五   病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護


(a)判例の紹介
@最判平成20年2月19日
交通事故の被害者が、老人保健法(平成17年法律第77号による改正前のもの。以下同じ。)25条1項に基づく医療の給付を受けてもなおてん補されない損害について自賠法16条1項に墓づく請求権を行使する場合は、他方で、医療の給付を行った市町村長が、老人保健法41条1項により取得した上記請求権を行使し、被害者の上記請求権の額と市町村長が取得した上記請求権の額の合計額が自動車損害賠償責任保険の保険金額を超えるときであっても、被害者は市町村長に優先して自動車損害賠償責任保険の保険会社から上記保険金額の限度で損害賠償額の支払を受けることができると判示しました。
d 生活保護法による扶助費
控除の対象にならないと解されています。損害賠償金の支払を受けた被害者が、生活保護法63条に基づく費用返還義務を負うことになります。

*生活保護法63条
被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
e 介護保険法による給付
既に給付された介護保険給付は控除の対象となりますが、将来受給できる介護保険給付は控除を否定する裁判例が多いです。
f 各種保険金
損害保険については、保険金を支払った保険者は、保険法25条や約款の規定により,支払った保険金の限度で第三者に対する損害賠償請求権を取得する結果、支払われた保険金の額につき被害者の損害額から控除されます。生命保険については控除の対象にならないと解されています。

 以下、具体的に説明します。

(a)生命保険金
生命保険金は,既に払い込んだ保険料の対価たる性質を有し、不法行為の原因と関係なく支払われるものであり、代位制度もないので、控除の対象とはなりません。
*代位
一定の理由に基づいて他人の権利を行使することです。
@最判昭和39年9月25日
生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人たる被上告人両名に保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除すべきいわれはないと解するのが相当である。
(b)搭乗者傷害保険金
搭乗者傷害保険(被保険自動車に搭乗中の者を被保険者として、被保険者が事故により死亡又は傷害を被った場合に支払われるもの)は、控除の対象となりません。ただし、加害者側が保険料を支出している搭乗者傷害保険金が支払われた場合には、それを慰謝料で斟酌する裁判例も多数存在します。
@最判平成7年1月30日
原審の適法に確定した事実によれば、(1)本件保険契約は、被上告人A運転の前記自動車を被保険自動車とし、保険契約者(同被上告人)が被保険自動車の使用等に起因して法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害をてん補するとともに、保険会社が本件条項に基づく死亡保険金として1000万円を給付することを内容とするものであるが、(2)本件保険契約の細目を定めた保険約款によれば、本件条項は、被保険自動車に搭乗中の者を被保険者とし,被保険者が被保険自動車の運行に起因する急激かつ偶然の外来の事故によって傷害を受け、その直接の結果として事故発生の日から180日以内に死亡したときは、保険会社は被保険者の相続人に対して前記死亡保険金の全額を支払う旨を定め、また、保険会社は、右保険金を支払った場合でも、被保険者の相続人が第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得しない旨の定めがあるというのである。
このような本件条項に墓づく死亡保険金は、被保険者が被った損害をてん補する性質を有するものではないというべきである。けだし、本件条項は、保険契約者及びその家族、知人等が被保険自動車に搭乗する機会が多いことにかんがみ、右の搭乗者又はその相続人に定額の保険金を給付することによって、これらの者を保護しようとするものと解するのが相当だからである。
そうすると、本件条項に基づく死亡保険金を右被保険者の相続人である上告人らの損害額から控除することはできないというべきである。
(c)所得補償保険金
所得補償保険(被保険者が傷害又は疾病のために就業不能となった場合に、被保険者が喪失した所得を補てんすることを目的としたもの)は、保険事故により被った実際の損害を保険証券記載の金額を限度として、てん補すること目的とした損害保険の一種というべきですので、控除の対象となります。
g 租税・養育費
租税額は控除しません。
 年少者が死亡した場合において、就労可能年齢に達するまで要したであろう養育費は控除しません。

@最判昭和53年10月20日
交通事故により死亡した幼児の損害賠償債権を相続した者が一方で幼児の養育費の支出を必要としなくなった場合においても、右養育費と幼児の将来得べかりし収入との間には前者を後者から損益相殺の法理又はその類推適用により控除すべき損失と利得との同質性がなく、したがって、幼児の財産上の損害賠償額の算定にあたりその将来得べかりし収入額から養育費を控除すべきものではないと解するのが相当である(当裁判所昭和36年(オ)第413号同39年6月24日第三小法廷判決・民集18巻5号874頁参照)。
h 香典・見舞金
被害者の遺族が受領した香典は、損害をてん補する性質を有しませんので、控除の対象となりません。

 加害者が被害者に交付した見舞金は、損害のてん補とならないのが原則です。もっとも、多額のものは損害のてん補と解されるので、控除の対象となります。

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